アニメとかの感想書留

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ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)

ドラえもん映画35作目。『ドラえもん 新・のび太の大魔境』の次作、『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』の前作。2015年3月7日に公開されました。

 

 

ざっくりとあらすじ

 ドラえもんの道具でヒーロー映画の撮影をしているのび太たちだったが、悪者に故郷を追われた宇宙人たちがそんなのび太たちを本物のヒーローと勘違いして自らの星まで招待する。のび太たちは、ドラえもんの道具によるヒーロー映画の撮影の一環だと一連の流れを理解するが、物語が進む中でそれが遊びではなく、本物の戦いだという事実が判明する。偽物ヒーローであるのび太たちは、ボックル星を守り抜くことができるのか?!

 

感想

う~ん、結論化から言うと、魅力に乏しい作品、かな。

この映画の目指したところって、エンターテインメント性だと思うんですよ。この映画を通じて何かを伝えたいとか、そういうテーマ性って言うものを極力少なくして、いかにして観客、特に低年齢層を虜にするかっていうところに焦点を絞ったと思うんですね。一応、アロンっていうボックル星の保安官が『』という悩みを持っており、それがこの作品のテーマといったらテーマなのでしょうが、のび太と会話するシーンなどでサラッと触れられたのみで、物語の進行上では必然性が無いというか、忘れていても差支えない程度の描写しかありません。それよりも、秘密道具を使ったバトルシーンなどに重心が傾いており、最初、物語の起承転結の“起”の部分からめちゃめちゃ戦いまくってます。

(無駄に)バトルシーンが多い上、物語の進行はちょっとテンポ悪いなと思うところもあり、約100分尺のうち、「のび太たちが宇宙海賊団という悪者を認識する」という状況になるまで40分くらいの尺を要します。「異星で悪者と戦う」というメーンストーリーに突入するための段取りをかなり丁寧にしてくれており、実際に見ている側に優しく、分かりやすく作られてはいるんですけど、肝心のアロンっていう人物の掘り下げが全体通して甘いのと、どのキャラクターにも必然性が感じられないことから、前半のシーンを二度見三度見で振り返ると「これを入れるならもっと他に描くべきことがあったんじゃ…」という感想を抱くことを否めません。

しかし、キャラクターの個性を極力薄く、隙あらばギャグシーンと戦闘シーンを入れるという意味では終始一貫しており、それ故に“エンターテインメント性”に重点が置かれた作品なんだなあと納得してしまう節があります。“エンターテインメント性”とは辞書的な意味だと「他人を楽しませる」という意味で、映画にとってのエンターテインメントというと、「観客に分かりやすいような話の構成を組み立てる」ことであったり「ワクワクするようなシーンを入れる」ことであったりと、観客のためという目的は一致するけどそれに至る経緯で意味が派生してしまう厄介な言葉です。私は今回、エンターテインメント性と何度か書いていますが、それはハラハラワクワクドキドキするような演出面で観客を楽しませる、そんな面でのエンターテインメントのことを申しております。っていうか、一般的な意味でエンターテインメントっていうとこういうことを言うんだと思いますけど、私のような日陰に住む中途半端な映画オタクが“エンターテインメント”という言葉を意識すると、脳内のホムンクルスが百家争鳴の解釈戦争を繰り広げかねないので、敢えて一応の定義をしておきました。

さて、演出面で勝負に出ており、それも成功している(少なくとも失敗はしていない、と思う)この映画、どうして魅力に乏しいと感じてしまうのでしょうか?

 

  1. ボックル星って何よ?

 緑豊かなボックル星。ダイヤモンドの太陽、アルマス。宇宙海賊団。

 「宇宙海賊団がアルマスを狙うためにボックル星を乗っ取った」っていうストーリー上においては矛盾はないのですが、ボックル星とアルマスはどういう関係なのかということが全く触れられておりません。たとえば、アルマスから放出される光は生命エネルギーに満ち溢れているからその恩恵を被ってボックル星の緑は豊かなんだよとか、そういう説明がちょこっとでも欲しかったな、思いました。また、『グラファイトが欲しい』と地面を這って死にそうな声を出していた敵の親玉イカ―ロスですが、なぜ彼(彼女?)が炭素を欲していたのかとか、そういう説明も一切なしです。また、のび太が綾取りでイカ―ロスをやっつけるのですが、その時にのび太ヒーローバッジが光るんですね。そして超威力を発揮してイカ―ロスを独りでやっつけますが、どうしてのび太がそんな火力のある攻撃ができたのか、バッジが光ったのにはどういう意味があったのか、そこら辺の説明も一切合財されません。「ヒーローバッジは精神エネルギーで動いてる」とか、「本物の英雄の資格を認められたときにバッジが光る」とか、何かしら前触れがあってのことならのび太ってすげぇな!って思えるんですけど、序盤から終盤にかけて、一貫して戦力外のギャグキャラとしての立ち位置を保守していたのび太が、“なぜか”発動した“奇跡的な力”で悪者をやっつけても、唐突すぎて正直ポカーンなんですよ。

 とにかく設定、世界観がガバガバで、ファンタジーとしての魅力もSFとしての魅力もありません。悪い意味でドラえもんらしくない作品だなと思いました。

 でも、そんな土台が弱い舞台でも、エンターテインメント性で押し切れているのが、この作品の凄いところだとは思いましたけど。

 

 2.内容がないよう

これは説明しなくてもいいかな

 

 この映画に関しては、思ったことはこれくらいかな?

 正義が悪を倒すドタバタ劇の完成度は高いと思いましたが、世界観をはじめとする知的な魅力に裏付けされているともっといいのにな、と感じた作品でした。

 

 日本誕生、ギガゾンビ楽しみだけど、観るのがこわいや。