「ルドルフとイッパイアッテナ」の感想
amazon primeの観放題のヴィデオに登録されていたので視聴。
今回、友人から教えてもらったことがきっかけで視聴に至ったのですが、以前から存在は知っていました。ポケモンの監督繋がりで。
この映画の内容は一言で表すと、人間の都合で翻弄される猫の運命の物語、です笑
おそらく、話の中で最も描きたかったものは、飼い猫だったルドルフが外の世界で他の猫の助けも借りながら自立していく過程だと思います。実際、その点は面白かったかなと思います。
最初は外の世界で乞食をするやり方すらわからず、喧嘩も弱くてビビリで、住所も分からないほど無知なルドルフが、イッパイアッテナから人間の文字の読み書きを教わり、その知識を生かしてイッパイアッテナのピンチを救ったり、勝ち目のないような喧嘩に挑んだり、家に帰るために東京から岐阜まで移動したりと、心が打たれ強くなり生きる技術も確かに身に着けたのかなと思いました。
反面、この物語の着地点があまりにも人間の勝手で済まされます。良くも悪くも笑。
なんか、ネコがあまりにも人間の近い生き物として描かれているので、いたたまれなくなります。人間に近いと思った理由として、文字の読み書きができることは勿論なんですけど、思考回路がそのまま人間…イッパイアッテナは「教養が無いやつめ」っていうようなことを何度か口にします。猫の世界に”教養”という概念があるということは、普通なら考えにくいです。
現実的ではないからダメ、という話ではありません。
猫が人間の思考様式に近いから、ネコの形をした人間の話を観ているようで、ラストの展開があまりにも辛すぎるのです。
そんなラストの展開は、家に帰ってきたルドルフだったが、その家には既に新しい猫がいたということ。しかも、その猫はルドルフと一緒の毛の色をしており、また、目の光彩の色もルドルフと似ています。しかも、名前までルドルフと一緒でした。
そう、前の飼い主は、失踪したルドルフの替わりを買ったのです。(しかも、失踪後も、家の窓が開いており、ネコが簡単に脱出できるようになっている状態笑)。二匹は飼えないということなので、ルドルフは自らそっと身を退きました。
これ、人間で状況を考えたら辛すぎますよね。
孤児院から養子縁組をして入った家の子供が迷子になって、やっとも思いで家に帰ってきたら、自分そっくりの子供が新たに孤児院から引き取られていたっていう。
「私が受けてきた愛情って一体…」という、人間の自信の根幹に関わる問題だと思います。
しかし、まだまだこれだけでは終わりません。
ルドルフが家に帰るために旅をしている間、イッパイアッテナは、自分を捨てた飼い主に会うためにアメリカに行こうとしていました。しかし、実は元の家に飼い主がお金持ちになって戻ってきており、イッパイアッテナはまたその飼い主と一緒に暮らすことに。そしてイッパイアッテナとルドルフは、愉快な仲間たちと一緒に美味しいご飯を食べて仲良く暮らしてめでたしめでたし…
じゃ、ねーんだよ💢
いやぁさ、個人的に一番問題ありだと思うのがイッパイアッテナの飼い主。
この飼い主、アメリカのアパート(?)に猫を連れていけないっていう理由でイッパイアッテナを捨てました。そして、イッパイアッテナが一人でも生きていけるように文字の読み書きを教えたのです。
いや、違うだろ!!
お前のすることは猫に字を教えることじゃなくて、預かり先を見つけることだよ💢
(字を教えるよりも簡単だと思うんだけどな)
んで、自分の都合で猫を野に放っておきながら、自分の都合でまた飼い始めるって言うクズっぷり。
これも、人間に置き換えて考えると分かると思います。
海外に転勤する両親が「お前には知識を与える。これからは一人で生きろ」って言って家を追い出してくるのと一緒。良いとか悪いとかを超越して、サイコパシーが高すぎてビビります笑
まあ、ここら辺の、別に話の本筋でやりたかったこととは違うんでしょうから、別に言及しなくてもいいところなのかな~と思います。
しかし、ね~。
猫の話だって考えると気にならないんですけど、人間の話のように考えると、「本当にそれでいいのかお前ら!!」と言ってしまいたくなりますね(笑)
それと、現実問題、親の都合で生んでおきながら「生んでやった」と感謝の押し売りをしてくる毒親や、後先考えずに子供を生んで邪魔になって虐待する親などは別に珍しくないので、そういう現実問題と照らし合わせて考えると捨て猫たちの事情と通じるものがあって、キツい話だなーと思います。
細かいことを言ってしまうと、ルドルフは確かに周りの力を借りてストレス耐性や協調性、それと、乞食という一つの技術を身に着けたかもしれませんが、本当に自立できたのかなと不安に思うところもあります。自分で自分の環境を操作できない状況下に置かれていますからね。こういう小手先の技術は、自分が置かれた状況を認識した上でこそ精神的にも実益的にも役に立ちます。「なんで自分は野良をしているんだろう?」という根本的な問題が分からないのに野良をしていても、また人間の都合で捨てられたり拾われたりしたら、そのたびに希望を抱いたり絶望したりしますよね。
人間社会だとこういうときに、決まって努力神話を持ち出す人間がいますよね。「お前が不幸なのは、お前の努力が足りないからだ」っていう論調。
なんか、想像なんですけど、イッパイアッテナも飼い主から努力神話を信仰するように催眠をかけられたのかなと思ってしまいました。「絶望は愚か者の言葉だ」「頑張れ」と。いや、イッパイアッテナが辛い苦しいのは全部お前が原因だよ笑
どうでもいい話だけどな・・・
努力と言う字は「女」に「又」に「力」、に「力」を足して「努力」。つまり、出産のことだよ。
出産のときの「ふんっ!!」と踏ん張る力で解決できることは、出産だけだよ。
努力神話大嫌い。