アニメとかの感想書留

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『天気の子』の感想

流行から少し外れたこの時期に、話題の『天気の子』を観てみました。その感想をここに書こうと思います。

 

物語の感想と言うのは「良い」とか「悪い」とか単純に決めることはできないですよね。作品として観客を物語の世界に引き込ませる力があるかどうかの「良い」「悪い」であったり、作品としての完成度は高いけれども筆者のメッセージ性が自分と一致するかしないかという視点での「良い」「悪い」であったりと、人それぞれの基準の中の「良い」「悪い」があると思います。

今回は、できるだけここら辺の違いを明確化・・・しないで駄々洩れ型の感想を書いていこうと思います。

 

 

悪いと思ったところ

1.最初が退屈

最初が退屈です。

物語のヒロインとなる女の子が鳥居をくぐって、幻想的な世界を舞う映像が流れます。絵を楽しむという意味では全然飽きないのですが、一方、物語の中で何が起こっているのか全く理解できないためじれったく感じました。「何々?何が起きているの?」と観客を焦らすために最初に意味が良く分からない映像を持ってくるということは、映像作品においてはよくあることです。実際に、私は「過去の話か現在か未来か分からないけれども、何か凄いことが起きているんだな」とちょっと期待しながらそのシーンは鑑賞しました。しかし、とにかく長い!!何分くらいかは分からないけれども、本当に長く感じました。ワクワクは次第にイライラへ。「早く次のフェーズに移行してくれ」と掌を開いたり閉じたりニギニギしながら鑑賞しました。

そして、そのシーンが終わると、全く関係の無い船のシーンへ。さっきまで登場していた女の子とは無関係のシーンに移り、ここからは主人公の男の子の視点で物語が描かれることになります。そして、田舎から来た主人公のアルバイト探しの話がしばらく続きます。どうして男の子はネカフェ生活をしながらでも都会でアルバイト先を探しているのか、などの主人公の背景や考えていることが全く分からないまま、ひたすら未成年者のバイト先探しの厳しい現実が描かれます。なぜ主人公がそのような行動をとっているのか分からないまま主人公の行動をひたすら観察し続けなければならないことは、少しだけ苦行だなと思ってしまいました。

「俺は東京で夢をかなえてBIGになるんだ!!」とか「田舎の閉鎖的社会の虐待的な環境から抜け出すんだ!!」とか、なんでもいいから理由が説明されているだけで、積極的に物語に感情移入するための機会を得ることができるのにな~、と思っていました。

 

2.物語の世界のルールがよく分からない

『天気の子』のヒロインの女の子には、天気を操作する能力があります。

この能力に関する設定が良く分からない(笑)

そのため、話の中で起きていることの意味というものを理解しながら鑑賞することができないところがありました。

ヒロインは天気を操る能力を持っていますが、その代償として天に生贄として拉致される運命を辿らなければなりませんでした。

しかし、「能力を使いすぎた代償として生贄にならなければならなかったのか、それとも時間経過によるものなのか」「生贄になった人物はその後どうなるのか」といったルールが分からないまま話が進んでいきます(最後まで説明はありませんでした)。そして、クライマックスの方で、生贄として天に上ったヒロインを主人公が迎えに行く展開があるのですが、その展開についても、「ヒロインが能力を得るきっかけとなった鳥居をくぐればヒロインに会いに行ける」「そこに行けばヒロインを連れ戻すことができるかもしれない」というルールが示されないまま、主人公は必死になって鳥居を目指します。警察を巻き込んでの大混乱を起こしてまで必死になって鳥居を目指しますが、そもそも鳥居をくぐれば何かが変わるという可能性が作中で示唆されているわけでもなく、また、今すぐにくぐらなければならない理由が示されているわけでもないので、ただ迷惑な少年に思えてしまいました。タイムリミットがないなら、警察で事情聴取をしてからでもよくないか…?

まあ、こんな事情もあって、迷子になった心境で視聴している時間も短くはなかったです。

 

3. 就活に恨みでもあるのか、新海さん?

登場人物の一人が就活に苦戦するシーンが描かれます。

このシーン、まったく、驚くほど物語の本筋と関係ないんです(笑)

比較的、ストーリーの本筋とは関係の無い余計な要素は入れない映画だと思いますが、それだけに、就活の話の突拍子の無さが際立つ(笑) 『君の名は。』でもなんかぶっこんだように就活の話がでてきましたが、新海監督は就活に関して何か思うところがよほどあるのでしょうか?

 

良いと思ったところ

1. 絵がとにかく綺麗

いやぁ、絵がきれいって本当に正義。

だって、序盤で冗長でイライラすると思った展開も、絵がきれいだとなんだかんだ観てしまいましたからね。

兎に角、本当にきれいです。

(しかし、花火の描写とかはちょっとクドいように感じました。「凄いだろ?」って見せつけられているように感じてしまった)

 

2. 物語的には納得できるラストだと思った

多くの人は、世界中の人々の幸せはおろか、自分たちが所属している国の政治にも興味が無いと思います。興味があるのは自分の身の回りの幸せだけです。広い視野で物事を考えている、『風と共に去りぬ』のメラニー・ハミルトンのような人物も世の中にはいますが、そういった思考も結局のところ、他人の問題にも自分の問題と共通のテーマを持つことに気付いているから至ることです。人間、やはり自分や自分の身の回りの人の幸せから優先順位をつけて考えていくのではないでしょうか。

そういう意味で、自分たちの幸せをとったラストは合理的だと思います。

ずっと物語は恋愛を中心に進んでいました。恋愛というものは個人的な問題です。個人的な幸せを築こうと考えている人物に、世界がどうとかいう話をしたところで、当事者からすれば「へー、あっそ」と思ってしかるべきだと思います。

 

良いとか悪いとか関係なく、ただ思ったこと

1. 銃はさすがに

鉄の塊なので、おもちゃと勘違いできるほど軽くないと思います(笑)

 

2. 「俺たちのこと、放っておいてくれよ!!」

作者の意図とは関係なしに、実はこれが、作中で一番根が深い問題だと思いました。

ヒロインは一年前に親が死んでから弟と二人で生活しています。生活費は、ヒロインが自らの年齢を偽って行っていたバイトで賄っていました。しかし、本来ならば二人は保護施設に引き取られなければならないはずなのですが、施設に入ると弟と離れ離れになる可能性があることを懸念してヒロインはそれを拒否しています。ヒロインとその弟は今の生活に不満を抱いてはいないようです。離れ離れにしようとする大人たちは悪としてヒロインたちからは捉えられていました。

主人公は「何も俺たちのことを知らない癖に」と言って、放っておいてくれと言っていました。

しかし、主人公の問題もそうですが、彼らに本当に必要なことは、愛のある大人からの積極的な介入だと思いました。

最終的にヒロインとその弟がどのようなところでどのような生活をしているのか、そこらへんはハッキリとは触れられていなかったと私は記憶しています。

彼女らが幸せになるのには大人の愛ある介入が絶対に必要なのです。しかし…そこに重点を置いていた話ではないので、そのあたりを描く必要も尺も無かったと思います。なんかハッピーエンドっぽい空気を醸し出していたラストですが、あの事件の後に何が起きて現在彼女たちがハッピーになったのか、気になるところです。

 

3. 島から逃げた主人公の気持ち

主人公は「絶対に戻りたくない」という決意のもとに上京してきました。16歳ながら。なぜ、ネカフェ難民なんて境遇に陥りながらも故郷に戻りたくないのか、ついにはホームレスと同様の目に遭って命の危険まで感じる事件に遭遇しながらも故郷に戻りたくないのか。

その理由は作中で語られます。その理由とは、主人公はとある島の出身で、晴れを追いかけていたら東京に流れ着いたとのこと。

いや、納得できねー!!

私も田舎の故郷から脱出したくてしょうがないteenagerを送っていたので、島という閉鎖的な人間関係が形成されやすい土地に住んでいた主人公の気持ちも、予想することはできます。だからこそ、なんとなく光を追いかけていたからとかじゃなくて、もっとちゃんとした動機を知りたかったなぁと個人的に思いました。

 

4. 新宿はそんな街じゃないよ!!

新宿に来た主人公が都会人から冷たくあしらわれる描写が多かったです。

確かに東京は使い方を間違えると恐い街です。しかし、あまり作中の描写のように、露骨に弱い者虐めをするような人はあまりいないかも?私は田舎にも東京にも住んでいたことがありますが、作中のDQN店員は田舎のドン・キホーテとかの方が近いかも(笑) 心の中では何を思っているのか知りませんが、都会の方が、少なくとも表面上は紳士な対応を心掛けている人の割合は高いと思います。

主人公に暴力を振るうモブキャラがいました。確かに新宿ってそんなイメージですが、ああいう商売をしている人たちって、割と死んだ目をして街中を歩いている人とか多くて、中学生に因縁をつけて喧嘩を売るような体力が残っている人ってあまりいない気がします(笑) まあ、割と主人公の方が勝手に熱くなっていた側面もあるので、さすがにキレるかもしれませんが汗

まー、アレですよ。ラノベとかでも「へい、そこの綺麗なねーちゃん!!」と絡むDQNが恐い人物のテンプレートとして描かれることが多いですが、私はそのような人物はかえって恐いと思いません。本当に恐れるべきは、善意を装って近付く者たちです

Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン

 

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今、幸せですか?